西山くんが不機嫌な理由





はっと息を呑んで振り返ると、変わらず気持ち良さげに眠る凪の姿があった。



先程のは寝言か、それとも幻聴か。




とりあえずそれにほっと胸を撫で下ろし、再度元の位置に座り直す。




途端に襲ってくる睡魔に逆らうこともなく、素直に従う。



別に起きている必要性も大して考えられないし、何より今日は精神的にも体力的にも参った。




静かに目を閉じて深呼吸をひとつ。




疲れの波がどっと押し寄せてくるのは良いものの、なかなか眠りに就くことが出来ない。



意識は朦朧とするばかりか、一向に覚醒していくばかり。




微かな苛立ちを覚えて閉じていた瞼を上げ、床に手を付いて立ち上がる。




突然視界が移り変わったためか、ぐらり、目の前が霞んでぼやける。



立ち眩みで身体のバランスを崩して数歩歩けば、不意に机と接触した。




ばさばさばさ、机に高く積みあがってあったノートやら教科書やらプリント類が床に雪崩落ちる。



(…………最悪、だ)



頭の中でぼやきつつ、屈んでひとつひとつ拾い集めていく。




教科書を見れば、確かに同じ高1の教材。



小テストの点数はさほど酷い結果ではないけれど、所々に書かれた落書きがやけに目につく。




無駄なまでに右上がりな字には、どちらかといえば男のようで。




あまりにも本人に似ても似つかないそれに、小さく笑いが零れた。




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