君想い
「園田?」


電話は切ったのに動かない私を見て
不思議に思ったのかそう蒼井が声を
かけた。


「はっはい。」


蒼井は、私の返答に口を抑えつつも
笑っている。


「もしかして、菜美から?」


「うん、ごめんね、
 急に…。」


「ううん。
 嬉しいし。」


私には蒼井の小声で言った言葉
“嬉しい”が届かなかった。


「え?」


何を言ったんだろう。


「何でもない、
 それにしても久しぶりだなー笑」

なんかごまかされた気分。

でも、まぁいっか。


「そうだねー、元気だったー?」


「元気、元気。
 土屋と順調そうだな?」


「うん、順調、順調。…

 明日、デートなんだ!

 だからその服買いたいんだけど、
 いいかな?」


「おう、それ菜美からきいてる。」


焼きもち…なんて焼くわけないよね。

蒼井は許嫁さんと順調なんだから。 


思った以上に傷ついてる自分が
嫌になった。


久しぶりに話せて嬉しい自分と
ドキドキしている自分がいて
土屋くんへの罪悪感しかなかった。 
 
ただ、菜美の代理で買い物するだけ。


ただそれだけ。


それなのに、このドキドキは
なんだろう。


もうっ。


やっぱり、他愛もない会話だけど
楽しかった。
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