君想い
section2
_______



ピンポーン


「ひなたー!

 あーそーぼっ!」


今日もまたピンポンを鳴らしているのに、大きな声で私の名前を呼ぶ声がする。


こんなことするのは優しかしない。


階段を駆け下りて、外に出ると

ぱぁっと明るく笑う優。


「行こ?」


そう言って手を差し出して、

2人手をつないでいつもの公園に

向かう。

2人で、ブランコしたり砂遊びしたり

走り回ったり色んなことして遊んだ。


「はい、これあげる。」


そう言って一厘のまだ小さな小さな

赤いチューリップを私に渡す。


私は嬉しくて嬉しくて。


「ずっとずっと一緒ににいようね。」


そう言ったら


優は私に軽くキスをした。


「ひなた大好き。」


これが私のファーストキス。


私は嬉しさがずっと消えなくて、

帰ったら早速チューリップを

押し花の栞にしてもらった。

私は、小さいながらに優が大好きで。
 


_______




…いつの間に寝てたんだろう。

それにしてもなんてゆう夢

見ちゃったんだろう。

あんなにはるか昔に封印したはずだった
のに。


この時はまだ小学生で、

お互い好きなんだったらずっとずっと

一緒にいられるんだと思ってた。


だけど、大きくなるうちに分かって

優は蒼井家の長男。

優の家は凄くお金持ちで、

生まれる前から許嫁がいる。


私の家は至って平凡な家。

どっちかって言うと貧乏寄りだし…

私は、優にはふさわしくない。
 

小さいうちはよく優と遊べたけれど

中学生に上がったくらいかな?


優は女子と本気で付きあうのが

禁止になった。


優の家のお手伝いさんは

近くにいた私にいろいろな嫌がらせを
した。


“遊び”ならいいですよ、

“遊び”なら…。


優が家にいるのにいないと言われたり

会いたくないと言ってるって言われたり

時には水をぶっかけられたり

家柄のことを悪く言われたり


あとから優に聞いて

優の両親に近づけるなと言われてる

からだとわかって

この気持ちを封じることに決めた。

優はごめん、ごめん

それしか言わなかった。

ううん、言えなかったのかもしれない。


お互い苗字で呼ぼうと私が提案した。


だって、あの声で“ひなた”なんて

言われたら私…どうにかなっちゃうもん。


今になってやっと話したりするけど、

中学の時はクラスもほとんど違って

全然話さなかった。


別に、付き合ってたわけじゃない。


好きだって言われて私も好きで、


ただそれだけ。


だから、そう


ただの幼なじみ。


もう何年も経ってるし

きっと優ももう前に進んでる。

私も前に進まなきゃ。


“未練がましい女なんて重い”

って思われるだけだ…。






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