【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
そりゃそうだ。大抵の人は坂が始まる前に設けられてある広い駐輪場に自転車を置いて行くのだから。

それだけ自転車で進むには困難な道のりであるにも関わらず、後ろに男を乗せて二人乗りだなんてはたから見れば私はお馬鹿なチャレンジャー扱いだろう。


「オラオラ、もっとペースあげろー。あさくら~、ファイトいっぱぁ~つ」


鼻息を荒くして力を振り絞る私の後ろで、曽根くんはやる気のない声援を送ってきている。

なんなの、何がしたいんだこの野郎!

途中曽根くんがお腹に回していた手で贅肉をつまみ「良いダイエットになるじゃん」と言ってきた時は、流石の私もセクハラだと彼を殴りたい衝動に駆られた。

ダイエットとはいうけど、地獄坂の異名を持つこの通学路でこんなハードなことしてたら、そのうちムキムキになっちゃうよ。

ティーンズ雑誌のモデル体型通り越して、逞しい肉体美を極めたボディービルダーと化してしまうよ。
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