【リメイク前】大きな桜の木の下で【完】
音声だけ聴くとこれは自転車の後ろに乗せてやるよと訳することができ、曽根くんがあたかも気の利いた善人のように見えるのだが、更に現在の映像を合わせて初めて言葉の真意を理解することが可能となる。
曽根くんはなぜか前のサドルから後方の荷台へ腰を下ろす位置を変えており、そんな不安定な状態で私のことを急かしてきた。
「早くしろよー」
「え、や、だって……私が漕ぐの?」
「美術部なんだろ?日頃運動不足なんだからこれくらい喜んでやれよな」
「でもこれから坂道なのに……」
「昨日のアレ、バラされてぇの?」
すっかり悪人モードの曽根くんが、してやったりといった様子で目を細める。
昨日のアレとは無論私が寺島にフラれてしまったことに違いない。
人の失恋を弱みとして悪用するとは、なんて外道な奴なんだ。この人でなしめ!
しかしチキンな私がそう抗議できるはずもなく、渋々従って長い坂道を自転車の二人乗りで上る光景は、友人を含め登校する生徒らの注目の的となった。
曽根くんはなぜか前のサドルから後方の荷台へ腰を下ろす位置を変えており、そんな不安定な状態で私のことを急かしてきた。
「早くしろよー」
「え、や、だって……私が漕ぐの?」
「美術部なんだろ?日頃運動不足なんだからこれくらい喜んでやれよな」
「でもこれから坂道なのに……」
「昨日のアレ、バラされてぇの?」
すっかり悪人モードの曽根くんが、してやったりといった様子で目を細める。
昨日のアレとは無論私が寺島にフラれてしまったことに違いない。
人の失恋を弱みとして悪用するとは、なんて外道な奴なんだ。この人でなしめ!
しかしチキンな私がそう抗議できるはずもなく、渋々従って長い坂道を自転車の二人乗りで上る光景は、友人を含め登校する生徒らの注目の的となった。