恋のはじまりは曖昧で
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「俺、結構分かりやすくアピールしてたつもりだったんだけど。もしかして気付いていなかった?」
伺うように聞いてきて、私はコクコクと首を何度も縦に振る。
そんなの全く気付かないよ。
あの後、もう少し田中主任と話がしたくて引き留めてしまった。
断わられるかも、という不安もあったけど「いいよ」とあっさりオーケーの返事をもらったんだ。
そして、私の部屋でテーブルを挟んで向かい合って座り、コーヒーを飲みながら話をしていたんだけど、まさかの発言に目を丸くしていた。
「マジかー。自信なくすんだけど」
「す、すみません」
肩を落とす田中主任にすぐさま謝罪した。
「いや、謝るなよ。俺もハッキリ言わずにいたから」
一体、田中主任はどんなアピールをしていたんだろう。
心当たりがない。
分かりやすくって……それに気づかない私はかなり鈍いってこと?
「一個だけ言っとくと、何とも思ってない子を家まで送ったりしないから」
そう言って田中主任はおもむろに立ち上がって私の隣りに座り直す。
「ぶっちゃけついでにもうひとつ。実は俺、入社前から高瀬さんのことは知ってたんだよ」
「え?」
次から次へと知らなかったことを聞かされ、頭が混乱してしまう。
どれだけ隠し玉を持っているの?って感じなんだけど。