恋のはじまりは曖昧で

月曜日、営業のフロアに入ると自分の席に座り、いつものように仕事の準備を始めた。

今日は営業会議に使う資料の作成を頼まれているので、パソコンに文字を入力していく。

手書きの紙には田中主任の綺麗な字が書かれている。
横目で書いてある内容を確認し、それを自分の中で噛み砕いで文章にする。
間違った解釈をしてしまうと、やり直さないといけなくなるので注意しなければいけない。
私がミスなく仕事をすることで田中主任の負担が軽くなればいいなと思う。

何気なく時計を見ると、十二時を回ったところ。
きりもいいし、お昼休みにしようと思った時にタイミングよく声をかけられた。

「紗彩ちゃん。お昼行かない?」

「はい。社食ですよね」

「うん」

弥生さんと一緒に社員食堂に向かう。
今日は私も弥生さんと同じB定食。

トレイにはご飯、ささ身の梅しそロール巻きとサラダ、卵スープがのっている。
揚げ物だけど、ささみを使っているからヘルシーだ。

「紗彩ちゃんはデートの定番て何だと思う?」

弥生さんがロール巻きを箸でつつきながら聞いてくる。

「え、デートですか?」

「うん」

男女数人で集まって遊びに行くとかはあったけど、デートって今までしたことがない。
田中主任ともまだだし……ってそれはおいといて。
デートと言われてパッと頭に浮かんだのはありきたりなものだった。
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