恋のはじまりは曖昧で
「映画を見たりショッピングに行ったり、ですかね」
「やっぱりそんな感じよね」
「それがどうかしたんですか?」
「いや、今度ハイキングに行こうって言われてて」
弥生さんが苦笑いしながら言う。
「あー、そうなんですね」
デートにハイキングか……。
私の頭の中にその考えはなかったからすごく新鮮に感じる。
最近流行っているのかな?
浅村くんって自然とか好きなんだろうか。
雰囲気的に今どきの男の人って感じだったから、そういうのには無縁そうだと思っていた。
人は見かけによらないんだな。
「やっぱりスニーカーは必須よね」
「そうですね。ハイキングということは歩きになると思うので」
そんなことを話していると、持ってきていたスマホにメッセージが送られてきた。
誰だろうと思い、開くと薫からだった。
その内容に思わず目を疑った。
【紗彩、あんた彼氏が出来たんだって?】
【私、聞いてないよ!】
え?
どうして薫がそのことを知っているの?
まさか、田中主任とのことがバレたんだろうか。
不安が一気に押し寄せ、スマホを持っている手が震えた。
でも、まだ田中主任と二人きりで出かけたことがないから、人に見られているはずがない。
だとしたら、どこからそんな話が出ているんだろう。
【何でいきなりそんなこと聞くの?】
まずは探らなきゃと、震える指で文字を打って返信した。