恋のはじまりは曖昧で

西野さんは私の二歳年上で一番年齢が近く、いろいろと話しかけてくれるお姉さん的存在だ。
すごく優しくて、私のことを気遣ってくれる。

「ありがとうございます。もう少しで終わるので大丈夫です」

「ホントに?それならいいけど。それと、もう定時過ぎてて総務は帰ったと思うから封筒に請求書を入れるだけにしといてね。郵送は明日してもらうことにしたから。あっ、必着とかあったら今日中に送った方がいいかも」

「はい、分かりました」

私の返事を聞いた西野さんは帰っていった。
しばらくして、会議室からお客さんたちがゾロゾロと出てきた。
そのあとに部長たちも出てきて、お客さんを見送った。
私は全員が会議室から出るのを待ち、立ち上がった。
給湯室に行き、お盆を手に会議室へ向かい、片付けをする。

換気扇を回し、空気の循環をする。
お盆にコーヒーカップを乗せ、給湯室に運ぶ。
これを二往復し、会議室のテーブルを拭いたりして綺麗に片付ける。
給湯室で洗い物を済ませ、中断していた請求書チェックを再開した。

それが終わると担当印のところに“高瀬”の印鑑を押し、封筒に請求書を入れて封をした。
万が一、請求書にミスがあった時に、その担当者宛てに電話がかかってきたりする。
だから、請求書のチェックはちゃんとやらないといけないんだ。

請求書を総務に持って行ける状態にしたあと、ようやく家路についた。
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