君と夢見るエクスプレス

「姫野さんとは、何にもないんだけどね」
「姫野さんじゃなかったら何? あの恥ずかしい彼と何かあったの?」



美波の言う『恥ずかしい彼』とは、もちろん橘さんのこと。そもそも私が美波に話したから、彼の肩書きになってしまってる。



彼が私に言ったお仕置きが冗談だとわかった今、『恥ずかしい』と彼が言われてるのもかわいそうになってしまう。
単なる同情だけじゃなくて。



今さら訂正することもできないから、美波が忘れてくれるまで待つしかないだろうけど。



「その彼と、ご飯食べに行ったの」
「何それ? いつ?」



美波の食いつきの良さに、思わず箸が止まってしまう。



驚くのも無理はない。
問題はその後のこと。恥ずかしい彼との展開を、どう説明したらいいのか。



「先週の土曜日、美波と別れてから」
「ええ? 私と別れてから? また茜口で彼と会ったの?」



声が裏返るほど、美波が驚いてる。
私だって、あの時は驚いたんだ。



さて、この後を何と説明しよう。


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