君と夢見るエクスプレス

「うん、ちょうど彼が仕事帰りで、同じ方向だったから」
「同じ方向って、どこに住んでるの? どうして間違えたのか聞いてみた?」
「彼も滝野原に住んでるみたい、間違えた理由は聞かなかったけど」



住んでるみたいじゃなくて、実際に彼は滝野原に住んでいる。しかも、ものすごく私の家の近所に。



現に私は彼の家にも行ったし、彼も私の部屋に来た。正直に言ってもいいけど、付き合ってるのかと問われたら?



橘さんと私の関係は何だろう。



「どんな人だったの?」
「思ったより普通の人だよ、もっと強引な人かと思ったけど……」
「強引? そんな素振りでもあったの?」
「いや、なんとなくイメージが、そんな感じに見えたから」



最初は、強引な人だと思ってた。
いきなり会議室で口止めされて、キスされそうになった時は。
だけど本当の彼は違ってた。



「ふうん、そう……、もし付き合うなら彼と姫野さん、どっちがいい?」
「は?」



美波の質問が、ますます私を悩ませる。

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