君と夢見るエクスプレス
私だって彼女らと同じ。
立っている乗客の隙間から、仁王立ちした彼の横顔が覗いてる。ぎゅっと固く結んだ口元と彼女らを見据える険しい目元は、まるで怒っているようで。
彼もまた、何か言おうとしているのがわかった。
もしかすると、彼女らの知り合いかもしれない。
そんな憶測の中、ブレーキの摩擦音とともに宮代駅に到着することを告げる車掌のアナウンス。さっきよりも車体が傾きを増す。
私は背もたれに預けていた体を起こし、両脚に力を込めて立ち上がった。バッグを肩に引っ掛けて、前に立っている人を掻き分けながらドアの方へと向かう。
横目で窺うと、彼はまだ女子高生らを見据えている。
いったい、何のつもりなんだろう。
すると固く結んでいた唇が、ゆっくりと開いていく。
「ちょっと、そこ退いてくれるかな?」
怒っているような顔とは少し不釣り合いにも思える軽い声。女子高生たちを馬鹿にしているようにも聴こえる。
突然発せられた声に驚いて、彼女らが体を強張らせたのは一瞬だけ。すぐに顔を見合わせて、くすくすと笑いだした。