アイツ限定
「千夏には、気を付けたほうがいい。」
明日香が珍しく、真剣な顔であたしを見てくる。
明日香が真剣な顔になるときは、相当ヤバいとき。
昔からそうだった。
雅人の時もそうだったし、あたしが犯された時もそう。
「なんで?」
千夏は、今朝の一件以外は、村上とは全く絡んでいるところを見たことはない。
接点があるようには見えないけど……。
「マリがいない間、あたし、ちょっと千夏のこと探ってみたの。今朝のことちょっと気になったからね。
千夏と同じ中学の子に、東出千夏って、中学の時どんな子だったの?って。そしたら、口をそろえて言うんだよ。
”アポロンには気をつけろ”って。」
アポロン…?聞いたことがある。
どこかで。
「アポロン……?なんだっけ……あたし、どこかで聞いたことがある。」
あたしは、んーっと頭を抱えて記憶をたどる。
「あたしには、さっぱりなんだよ……ってか、マリ!考えるのはいいけど、もうそろそろ3限目の数学B始まるよ!戻ろう、教室。」
そういって、明日香はあたしの手を引いて教室へと引っ張る。
あたしは引っ張られるまま、思考をめぐらす。
なんか、引っかかる。
席について授業が始まっても、そのことばかり考えてた。