アイツ限定
なんなんだ、この状況は……
目の前には知らないおっさん。
多分20代前半くらいの。
そして、猛ダッシュでこの場を立ち去った松木。
ってかなんで、このおっさん俺の名前知ってるわけ。
意味わかんねぇし。
俺は、立ち去った松木の後姿を、追いかけることもせずただただ見ていた。
「ああ、逃げられちゃった
まぁいいか。んで、俺今暇なんだよね。用はもう終わったし、あとは家に帰ってごろごろするだけなんだけど……寂しいじゃん?
んなわけで、俺とお話ししようよ、村上聖也君」
そういって、無邪気に笑ってくるこの謎のおっさん。
本当に意味わかんねぇんだけど。
「いえ、遠慮しときます」
俺はそういって、その場を立ち去ろうと、足を一歩踏み出そうとした。
こんなおっさんに構ってられるかよ。
こいつが、松木の元彼?
あの極度の男嫌いのあいつにが彼氏いた?
……おかしいおかしい。
「なぁ、お前さ。あいつの過去知ってるわけ?マリが男嫌いになった訳とか」
その言葉に俺は反応して、一瞬止まってしまう。
足を止めてしまう。
そして、後ろを振り返って、そのおっさんの方を見てしまう。
おっさんはフロントガラス越しに、ニヤッと意地悪そうに、笑っているのがみえた。
絶対にこの人、何か考えてる。