悲し笑いの横顔

 紗香とご飯を食べに行ってからまた一週間が過ぎる。
とりあえずは失恋の傷はちょっとずつ、ほんのちょっとずつ癒えてきた。少なくとも涙を落とすってことはない。

おそらく……柊木さんのおかげ。私の代わりに、彼のことを悪く言ってくれたから。

だけど――――その彼も浮気してるんじゃぁな。
はぁっと私は仕事中にも関わらずため息をついた。メモをとっていた文字が若干ゆがむ。

浮気、本当にしてんのかな?
あんな、くったくのない笑顔を浮かべるヒトが。

でも、してるんだよなぁ…、紗香に報告した通り。
だって本人が暴露してきたんだもん…


「鴨井、これお願い。」

「あ、はい。」
 デスクで作業していた私に、上司である円谷さんが資料をはべらせてくる。30代後半で、強面の容貌の彼。

「昼飯そろそろとれよ。」
 それでも、こうやって今お昼を気にしてくれるところから分かるように、ケッコウ優しんだよね。

「そうですね、お言葉に甘えて早速頂いてきます。」

「はーい。」
 円谷さんのから返事を聞き、会社の食堂へと向かおうと手のひらサイズの財布を手に持ち、私は階段を降りていった。

「お疲れ様です。」

「お疲れ。」
 途中、昼食をとった帰りだと思われる社員さんと数人すれ違う。

今日は何食べようかな。脂っこいものはちょっと受け付けないから、トンカツは無しとして。うどん、そば、唐揚げ定食、ラーメン……


うーん、どれもピンとこない。
あ、カレーにしようかな、風邪気味でもないのになんかカレー食べたい気分だよ。

食堂に着くと、私は券販売機で真っすぐにカレーライスというボタンをぽちっと押した。

 そのまま食堂で昼食を作ってくださっている方に、その券を差し出す。ほどなくして呼ばれると、私は出来上がったカレーを近くの空いているテーブルにまで運んだ。

ぷわ~んとおいしそうに立つ湯気。食べて食べてとばかりにゆらゆら踊って、まるで私を誘惑してるみたい。

「いただきます。」
 お望み通りスプーンに大きめにとったそれを口へ運ぶ。

甘い味がまずは広がり、ちょっとたってピリリとした辛さ…おいしい。

あーあ、家でもこんな風に作れたらいいのに。
また一口私は口へカレーを運ぶ。

―――もしかして、あの人は知ってるのかなぁ~おいしいカレーの作り方。レストランに勤務してるぐらいだから、仮にも料理人だと思うし。

って。

そうだとしてももう会うときないんだから教えてもらえないんだけど。

「はぁ~あ。」
 ため息を掻き消すかのように私はまたカレーを咥える。


…仕事頑張らなきゃなぁ。

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