ヤンデレなら、病んで下さい!
悩んでいるうちに、紅葉ちゃんがやって来た。
「紅葉ちゃん、今ーー」
「バカーっ!」
開口一番に罵倒されてしまった。
「あんた、危機感なさすぎ!人に声をかけられたら、疑ってかかりなさい!今時、小学生でもあの手の声かけには引っかからないわよ!」
「え、今の人は呉服屋さん探していただけで」
「呉服屋なんて、デカデカと看板出てるじゃない!わざわざ手を引いて案内させようとするまでのことじゃないわよ!」
「看板ないって」
「それがそもそも嘘なのよ!そのまま、『案内してもらえて助かりました。このままお茶でもどうです』コースにまっしぐらよ!あれよあれよとの間に、『二万でどうかな?』ルートに行かされるわよ!?」
ルートとコースの使い分けを何で区切っているのかは知らないけど、そうか、さっきの。
「わ、私、また」
馬鹿なことをしてしまった。
何でこうなのか。世間知らずで育ったわけじゃないのに、もう、自分が自分で嫌になる。
『雛は、悪くない。優しいだけで、その優しさにつけ込もうとする奴が悪いんだ。殺したいほどに、ね』
そんな彼の言葉を思い出しながら、スマフォを握る。
彼から連絡なければ、危なかったかもしれない。
「あの人も、彼氏持ちだと思って逃げたのかな」
「それは違うわ。あんな着信聞けば、寒気覚えて逃げ出すに決まっているわよ」
着信?と、スマフォをいじり、先ほど鳴ったものを鳴らす。
「往来で鳴らさない」
ぺしっ、と突っ込まれた。
「や、やめて、あたしまで鳥肌が立つわ!鳥肌あとに恥ずかしくなるっ。胸元をかきむしりたいほどの恥辱がーっ!いつの間にそんな着信音にしたの!恥ずかしさをどこに捨ててきたっ」
「は、恥ずかしくなんか、ちょっと照れるけど、彼の声、聞いてて落ち着くし、目覚まし用にも作ってくれたんだよ?」
「健気な天然っ」
ハンカチを噛み締めるかのような涙を流す紅葉ちゃんだった。