センセイの好きなもの
私に言わされたから言わせたいってところ?


「巧先生です」


「先生じゃなくて」


ほら、と肩を叩いて急かしてくる。巧先生の目は希望に満ちているようなキラキラした感じがして、私はもう後には引けないらしい。

だけどいきなりこんなのって…ね?


「早く言えよ、ツム!」


私がどうしたものかと考え込んでいると、巧先生はイライラしたように私の肩を掴んでゆさぶってくる。



「言わないとチューしてやんないぞ」


「チューなんていいです」


「俺がしたいんだよ。ツム、言ってみ」



私、ファーストキスなのになぁ。
心の準備ってものが必要なのに。
巧先生はそういうの全然分かってないらしい。


「…どうしても?」


「どうしても。ほら、早くしろよ」



巧先生はすでに私にチューしようと顔を近づけてきている。
どうやら逃げ道はないらしい。ここで突き飛ばすわけにもいかないしね。

大きく息を吸って、覚悟を決める。



「巧が好き」

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