極道一家のマヤ



私は静かに目を伏せた。


「この人は社透哉。私の……義理の兄」


「え……」


杏奈の目が見開かれる。


「ごめんね、杏奈……。私、行かなきゃいけないの」


杏奈に一条龍、そして美都場には、私の家のことは全て話している。


だから、目の前の男が、私を捨てた社家の長男だと……杏奈はすぐに把握しただろう。





「行くって……どこに行くの?」


「……」


詳しい、これからのいきさつは話せない。


川崎組の暴走を止めにいこうとしているなんて……


杏奈に話せば、きっと彼女は私を止めようとする。


それだけじゃない……


『龍』や『嵐』の人たちにもバレてしまうだろう。


そうなったら、きっと奴らは私を助けようとするはず……


だって、優しいから……







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