恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
戻れない
タクシーで自宅のマンションに着くと、寛は部屋まで私を送り、すぐに近所のドラッグストアに向かった。
湿布や包帯、スポーツドリンクなんかを買って、再び私の部屋に戻ってくる。
「手当ては、させてくんないよな」
「当たり前。自分で湿布くらい貼れるよ」
私は寛に一人掛け用のソファを勧め、キッチンにコーヒーを作りに行く。
私の部屋に二人きり。あの晩以来だ。
そわそわし、落ち着かないけれど、助けてくれ、送ってくれた寛を追い返す気にはなれなかった。
なにより、久しぶりに寛と共にいる感覚が嬉しかった。
ダメだと思いながら、胸が高鳴るのを止められない。
タクシーで並んで座った時ですら、久しぶりの寛の香りに私は狂おしく切なくなった。
きっと、吊り橋効果というやつだ。
自分に言い聞かせる。
怖い想いをしたから、その動悸を勘違いしているのだ。