恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
あからさまに走ることは、はばかられた。
追跡者を刺激しそうで、怖かった。

だから、私はヒールを響かせ、なるべく早足で歩いた。
背後の気配も動き出している。


変質者だろうか。

どうか、私の勘違いでありますように。

路地の出口まであと数メートルというところで、目前にぬっと人影が現れた。


「きやっ!!」


背後の人影が、前に回り込んだのではと思った。
そんなはずないのに、焦った私には判断ができなかった。


「おい、琴!どうした」


目前に現れたのは寛だ。


「顔真っ青だぞ。なんか、あったのか?」


私はドキドキと早鐘を打つ心臓を押さえ
、寛を見上げた。


「寛、……よかった……」



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