恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
その日は偶然だった。

総務に書類を提出し、第三営業部に戻るエレベーターホールで寛と会った。
まずいと思う間も無かった。


「琴、ちょっといい?」


「これから外出だから、時間ない」


「じゃあ、今夜は?久しぶりにいつもの店に行こうぜ」


私は他に社員がいないことを確認して、寛に向き直る。


「いい加減にして。どういうつもり?」


「何が?」


寛は動じない。しれっと聞き返す。


「私、何度も言ったよね。あんたとは距離置きたいって。今までみたいな学生ノリで仲良くするのは止めようって言ったよね」


「俺は了承してない」


「私はイヤだって言ってるの。安田の件を蒸し返して悪いけど、あんな風に恋人を傷つける結果になるなら、寛との距離を一般論でいう常識的なものに戻す!」

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