ただ、君の隣にいたいだけ
「あの、亮輔さん・・・」



意を決し、顔を上げて謝ればまだ今なら家に連れて帰ってくれるかもしれない。そう思ったのに。顔を上げた瞬間、いきなり口を片手で塞がれた。



「知らなかった?俺はいつだって君のことしか考えてない。もちろん、アクターやショーのことは大事だ。だけど常に頭から離れないのは花菜ちゃんのことばかりだ。それに俺がズルイ男ならもっと花菜ちゃんを振り回してるよ。弄んで好きにさせて捨てる。それができないから苦しいんだよ」



何、言ってるの?声を発したくても全て掌の中に吸い込まれる。苦しそうに顔を歪める亮輔さんの顔を初めて見た。


そして、初めて亮輔さんの本音に触れているようなそんな気がする。



「でも、花菜ちゃんが俺をズルイ男だと思うならもういいよね?俺が遠慮する必要なんてないよね。手、離すよ」



亮輔さんと口を開きたかったのに今度は掌じゃなくて唇で全て飲み込まれる。


息もつけないほど奪われた後、まるで亮輔さんは今までとは違う最初の頃の意地悪な亮輔さんに戻ったような笑みを浮かべる。

さあ帰ろうかと放心状態の私なんて気にせずに亮輔さんはシートベルトを閉めて車を走らせた。
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