ただ、君の隣にいたいだけ
「みて。シャボンだまきれいだよ。いっぱいとんだ」



気がつくと裸足になった明海が砂の上で波に向けてシャボン玉を吹いている。小さな小さなシャボン玉が空に向けて飛んで消えていく。

私が今、したいことは何なんだろう。
何が私には出来るんだろう。



「花菜ちゃん、ほらっおいでよ。明海が花菜ちゃんを呼んでるよ」



ボーッとその場で立ちすくみながら明海の吹くシャボン玉を見ているとパッと腕が掴まれた。我に返ると亮輔さんが笑顔を見せている。



「は、離して、離してください。何なのよ、あなた。自分は明海にも懐かれてお母さんとも仲良しだからって急に現れて私の居場所取らなくてもいいじゃない!!あの家は唯一の私の居場所だったのに・・・」



パッと掴まれた腕を振り払った。
なんなの、何なのよ。


「・・・居場所なんて自分から踏み出すことでいくらだって作り出すことができる。だけど今の花菜ちゃんじゃダメだね。差し出された手ですら跳ね除ける。どうせ私はダメなんだ、私には何もない。そんなことを思ってるなら俺がその居場所を簡単に奪ってあげるよ。そして一人で苦しめばいい」



「何なのよ!なんでそんなこと言われなきゃいけないの!」



「誰も言わないから。居場所を奪われたら必死でもがくんじゃない?意地でも自分の居場所を探すために。ねえ、花菜ちゃん。落ちたら上がっておいでよ。俺は君がしたかった『子どもと関わる仕事』をしてる。花菜ちゃんが一歩踏み出してくれたら協力する。待ってるから」



言いたいことだけ言って明海の元に戻って行った亮輔さん。全部図星を突かれて心が悲鳴を上げている。でも同時に掴まれた腕が熱い。



悔しい、悔しいのに彼が走っていく後ろ姿から目を逸らすことが出来なかった。
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