ただ、君の隣にいたいだけ
「相原さん、今から機械入れるので少しだけ力を抜いて楽にしててくださいね」


カーテンの奥で声がしてヒンヤリと冷たい器具が中に入っていく。先生のやっぱりかぁという声が聞こえてきて途端に不安になった。やっぱりって何だろう。


検診台が動いて下着を付けてくださいと言われ、すぐに下着を付けて先生の前に行く。椅子に座るように促されてジッと検査の結果を待った。


「相原さん、残念ですが今回は妊娠されてませんね。エコーで確認もしてみたんですが胎児も胎嚢も見当たりませんでした。尿検査も陰性でした」



「えっ?で、でも生理が一週間も遅れてるんです」



この人は何を言ってるんだろう。妊娠してない?だって、生理が来ない。私は不順じゃない。今まで一度だってこんなことはなかった。それなのに妊娠してないなんて。そんなの信じられない。



確かに確実じゃないとは思ってた。でも、でもついさっき、亮輔さんと頑張っていこうっていったところだったのに。



「恐らく女性ホルモンのバランスが崩れてるんだと思います。不規則な生活をしたりストレスでも生理が遅れることはあるんです。そんなに落ち込まないで。若いんだし、結婚もしてないんでしょ?これから恋をして結婚してそれからでも全然遅くないわ。今しか出来ないことたくさん経験しなさいな」


女医さんに頭を撫でられてそれでも心は無のまま。お腹には最初から子どもなんていなかったんだ。撫でたって空っぽ。


そうだ、いなくて良かったんだ。だっていたらショーの仕事出来なくなる。私にはアクシーズが大事。良かった、亮輔さんとまたショーが出来る。



これからもアクシーズでアクターが出来る。春からはMCや影マイクにだって挑戦したい。そう自分に言い聞かせるようにした。
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