ただ、君の隣にいたいだけ
「どうしたの?」


動きを止めた私を見た亮輔さんの視線は問診票に移る。どっちなんだろう。亮輔さんは。やっぱり産んでほしくない?迷惑?



「・・・出産希望でしょ?下ろすなんて考えられないよ」


「でも・・・」


「花菜ちゃんはどうしたい?俺はそうしてほしい。苦労掛けるばかりだろうけれど産んでほしいよ」


「・・・いいの?でも、亮輔さんの夢は諦めないでほしい。私も頑張る。いっぱい頑張るから」


「うん。俺も頑張るよ。だからこっちに○付けてよ」



亮輔さんが産んでもいいって言ってくれた。嬉しい、本当に嬉しい。勢いよく私は問診票の出産希望のところに大きな○を付けた。


でも、それはほんの一瞬の幸せだった。



問診票を渡して尿検査と血圧、体重を測定した後、名前が呼ばれるまで二人で並んで手を繋いでジッと待つ。


女医さんということもあってかなりの待ち時間。その間、なんとなく二人お腹の大きな妊婦さんを見つめてあんな風になるのかなと優しい気持ちで話していた。



「相原さん、相原花菜さんお入りください」



ようやく呼ばれたのは一時間後。亮輔さんは待合室で待っているというので私、一人診察室に入った。


中には綺麗な女医さんと看護師さんが一人。すぐに検診台に促され、下着を取ってそこに座った。
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