ただ、君の隣にいたいだけ
私の言葉にゴホゴホと噎せた亮輔さん。目を丸くして私を見た。そう、私の知ってるタラシの亮輔さんは優しい口調。


でも、観覧車に乗ったあの人の口調はもっと乱暴だったんだ。



「ずっと不思議な違和感を感じてたんです。どうしても観覧車の人と亮輔さんが一致しなかったから。でも、さっきみたいな口調だったら私はすぐに気づけたかもしれないなって」



「どっちが地かって聞かれたら荒い方かな。でも、花菜ちゃん・・・優しい人が好きなんだろ?元、カレだっけ?結構乱暴口調だって聞いたから気、つけてた」



「やだ、そんなこと誰から聞いたんですか?お姉ちゃん?そうだ、お姉ちゃんと電話してるときにやたらと話しかけてきてたからお姉ちゃんから聞いたんですね?あーもうだからって言って亮輔さんがそんな無理する必要ないんですよ」



もうお姉ちゃん、余計なこと言い過ぎ。確かにお姉ちゃんには言われてたんだよね。あんたの彼氏、言葉が乱暴だって。


でもあいつは乱暴というより最後は私のことただの都合のいい奴にしか思ってない口調だった。


思い出したくない。おにぎりに手を伸ばし、口を付ける。中身は私の好きなシャケ。焼いて解したやつを入れてくれてる。それだけでも手間なのにわざわざお母さんは作ってくれたんだ。美味しい。



「でも、好かれたかったから。そんな乱暴口調の彼氏なんかよりずっと好かれたかったから」
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