オトナになるまで待たないで
6…坂

大会

誕生日がきた。


ようやく18歳。

まだ18歳。

だけど、今年は妃乃がいる。

ゴウに祝ってほしいけど、正装はこっちなんだから仕方ない。


甘い物は食べない私に、飛びきり高い和牛を焼いてくれた。

「やっわらかーい!!美味しい!」

「美味しいやろ。オウミ牛。お母はんに送ってもらってん」

「オウミってどこ!?」

「滋賀や」

「シガってどこ!?」

「琵琶湖や!」

「ぼわこ…?」

「ほおばり過ぎ!」


妃乃は、私にかまわず不満げだ。

「松井さん、ちっとも距離感が縮まらへんわ」

「忙しいからね」


妃乃は、一週間に一回はバイト先に顔を出す。

こっそり妃乃の名前で会員証も発行したから、今はネットも使える。

「あんなブラック企業、何がええの~!

松井さんなら、バーテンダーとかモデルとか、

ええ仕事がぎょうさんあるのに」


私は鼻で笑ってやった。

「ま、何んやの!感じワルイ!」


愛想笑いもできないのに、

バーテン?

モデル?

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