涙色の空をキミに。







『部活動終了時刻になりました。片付けをして気をつけて下校しましょう。』






ただ無心で描き続けていると、そんな放送が聞こえて慌てて立ち上がる。





…やばい、今日は特に夢中になりすぎた!






全部の片付けを終えて15分後の完全下校時刻までに門から出ないと部停の危機になる。






部停になっても私しか美術室を使わないからきっと誰も何も言わないのだろうけど、私自身がそんなの無理だ。






…家で、絵なんて描けるわけがない。






急いで筆を洗って絵の具たちを片付けていく。







最後にキャンバス達を準備室に入れてから、荷物を持って美術室を出た。






鍵を閉めた時点で下校時刻まで残りあと6分。







…ギリギリだけど何とか間に合いそう。







走ってすぐ近くの職員室まで行って鍵を返してから昇降口で靴に履き替える。






「あ、夢空!ばいばい!」





「うん、じゃあね。」







途中で何度かクラスメイトと顔を合わせて挨拶しながら門の外へ無事に時間内に出ることができた。





「おお、夢空セーフ!」




「珍しいね、いつもは早いのに。」




「…ごめんっ、今日ちょっと絵を描くのに夢中になりすぎて…」




「ああ、あるある、つい時間見ない時ってあるよね〜」






もう門の外にいた夏芽と彩に、肩で若干息をしながら謝る。





いつもはもっと早く片付け始めるからもう少し早い時間に来れるんだけど、今日は完全に時間を意識してなかった。






軽く息を整えながら3人で歩き出す。






市立の中学校だから、歩き通学の人がほとんどを占めていて、私達も例外ではない。







「昨日さ録画したはずのテレビが消されててさガチで泣こうかなって思った。」





「えー?私あれほど残量確認しとけって言ったよね?」





「そうだっけ、はは。」






そんな夏芽と彩の会話を隣で聞きながら歩く。







< 10 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop