涙色の空をキミに。
「…じゃあ、少しだけ話を聞いてもらっても、いい?」
微かに震えが残る声で創り上げた言葉にみんなが真剣だけど温かい雰囲気で私を受け止めてくれる。
ゆっくり手を顔から外すと、みんな手を止めて私を見ていてくれた。
「あんまり誰とか言えないんだけど、今まで私が苦しんでいる時に助けてくれた人がいるの。…私にとって、大切な人。でも、その人がずっと昔から苦しんでたことをつい最近知ったんだ。」
膝の上に置いた手でぎゅっと拳を握る。
そう、最近知ったんだ。ずっと前に気付けた、はずなのに。
「何回もその人に救ってもらったから、私もその人を助けたいって思ったんだけど、関係ないって諦めたからもういいって拒絶されちゃって。…私の声も言葉も何もその人に届かないみたいで。私じゃ力不足なんだ。…でも、その人が諦めて静かに悲しんでるのを見てるだけなんて嫌で。…私は、どうすればいいのかわかんないんだ…。」
小さいけれどみんなに聞こえる声で、全部の思いを言ったところで震えを落ち着けるように、…ふうっと息を吐いた。
静かに聞いていてくれた3人に少し沈黙が起きたと思ったら、1番最初に口を開いたのは彩。
「…夢空は、何回その人に説得っていうか、助けたいって伝えたの?」
「…2回、くらいかな。」
琉空の話を聞いた時。その次の日の美術室での会話。
私の返答に、そっかと返事した彩がずいっと身を乗り出してくる。
「夢空は2回だけで諦めちゃうの?伝わらないなら、届くまで伝えるべきじゃない?少なくとも私達のクラスを変えた夢空は、そうだったよ。届かないって諦めるんじゃなくて、届くって信じて何度でも戦っていた。…そんな夢空だから私達は変われたんだよ。」
「…うん、私も彩の言う通りかなって思う。夢空とその人の関係を詳しく知らないけど、届く声とか言葉とかそんなの考えているんじゃなくてありったけの自分の想い、伝えればいいんじゃないかな。それが届かなかったら何回だって。大丈夫、夢空の想いは時間がかかったとしても、絶対届くから。」
「…大丈夫だよ、諦めなければ強く望めば、変わるよ。夢空ちゃんは1人じゃない。その人もきっと救えるよ。」
続けてみんながくれた言葉に、少し驚きながらも泣きそうになった。
私は、琉空に背中を押されてクラスを、みんなを変えられた。
…ねえ、今度は琉空を救うために、みんなが3人が背中を押してくれた。
「うん、頑張る。…ありがとう。」
「夢空は優しいから考え込むのは分かるけど、迷惑じゃないよ。微力でも夢空の力になりたいって私達だって思ってるんだから。」
夏芽の優しさに包まれながら届いた言葉に、ついに涙が目に滲む。
「あり、がとうっ……」
「わー!夢空泣かないで!ほら、ワッフル食べて!!」
彩が促した通りに涙を流しながらワッフルを頬張るとさっきよりも少し酸っぱくて、でも、心で感じる幸せが、さっきよりもずっと大きかった。
…また、届かないかもしれない。
でも、だから諦めるんじゃなくて、いつか絶対に変わるって伝わるって信じたい。
琉空をまた助けるために、届けよう。
私の想いを。私の言葉で。