涙色の空をキミに。
「…何、話って。それに俺がまだどうでもよくないって思ってるってどういうこと?」
私の目を見ずに俯いて言う琉空をじっと見つめる。
…この前、琉空が儚い幻みたいに見えた。
どこかへ蜃気楼のように消えていなくなってしまいそうで怖かった。
…だったら、私が琉空のこと見ていよう。
私は、琉空を消させない。幻みたいに消させないよ。
琉空のこと、見逃さないから。
「お母さんと椿さんのこと、全部過去にしたって言っても、まだ諦めていないでしょう?…前見た手帳、一文日記みたいに短かったけど書き込みがあったの全部今年の日付だった。」
椿さんの会社に行って門前払いだったとか、お母さんが旧姓使っているかも、とか。
全部お母さん達を探すための手がかりのようなもの。
目を見張った琉空に、無意識に力を入れていた手を開いた。
8年経っても、琉空はまだお母さん達に会いたいって思ってるでしょ?
「…それは、…別に、意味なんてないよ…、どうせそんなことやっても見つからなかったんだ。もうとっくにそんなの諦めてるし。言ったでしょ、夢空は何もしなくていい、って。これは俺の問題。…もうとうの昔にこのことは俺の中で終わったんだ。」
…終わってない。琉空は口ではそう言って頭に理解させようとしているけど、心が追いついてない。
心は諦めたくないって、どこかで会いたいって絶対に思っている。
…だって、そうじゃなきゃそんな苦しくて辛そうな笑顔にならない。
「…それだけ?…話がもう終わりなら帰りたいんだけど。」
「…終わったわけないでしょ。…そうやって逃げないで。目を逸らさないでよ。」
私がこぼした声は静かな美術室に案外響いて空気を振動させる。
…届けるって決めたから。
琉空がどんなに私を突き放しても、私は届くって信じているから。
届くまで諦めない。