涙色の空をキミに。
裏では文句を言っても実際の現場になったら基本こう。
結局はみんな自分が可愛くて仕方がなくて、
でもいじめを受け入れる自分にはなりたくなくて。
陰で愚痴を言っては主犯だけを悪者に仕立て上げることしかできない。
「あー、もううっぜえ!行こ、こんな奴と話してなんかいられない。」
「そうだね、行こ行こ。」
「ねぇー、理緒。今日は放課後どうするぅー?」
「この前行ったカフェは?お洒落だしさすが理緒って感じだったよね!!」
一通り荒らした後に呆れたような声を出して、高めにくくられたポニーテールを翻しながら理緒が教室を出ていけば必死で追いかける理緒軍団。
その瞬間張り詰めていた雰囲気が、ふっと和らぐ。
理緒軍団は理緒を合わせて4人。その4人が出ていけば教室はだいぶ静かになる。
嵐が過ぎ去った後の教室は、みんなが唖然としていて特に。
「うっるさ、自分で荒らしといて話してられないって馬鹿じゃないの。話さなきゃいいのに。」
「ていうか夏芽は大丈夫だった!?いきなり理緒が指名してくるんだもんビックリした〜。」
「あー、平気平気。よくあるし。うち空気を読む力だけは凄いから。」
「さすが夏芽!いやー、しっかし、うっざいなー理緒は。」
夏芽がへへん、と自慢げにしてるのを彩がおだてた。
……こういうところが2人とは、合わない気がする。
うざいって言っただけでいじめになるのをなんで気付かないんだろ。
なんでいじめたことに自慢げなんだろ。
「…なんか、疲れた。」
「ねぇー!やるなら目立たずにやれって思う!」
色々な意味を込めて小さい声でボソッと呟くように言った私の言葉に彩が同意する。
言いたい気持ちも、胸の違和感も、全て見ないフリをして、へら…と曖昧に笑った。
……ほら、また。私の気持ちは押し殺す。
自分の意見を口に出せないまま飲み込んで。
“やめなよ”の言葉も何もかも消し去った。
まるで自分の色を、
真っ黒な闇の色で塗りつぶすように。
本当に弱いのは、
─── きっと私だ。