冷酷な彼は孤独な獣医
「お前、瑞樹の所に行かなかったんだって?」


「あぁ…うん」


「昼は?食べたのか?」


「まだだけど……」


すると龍は、テーブルの上に置いた袋を持ち上げる。


「ほら、瑞樹に作ってもらったから食え」


「えっ……あたしの為に?」


「これからまた手術が入ってるから行ってくる」


「……うん、ありがとう」


龍は忙しそうに部屋を出て行った。




本当……龍は冷たくて優しくて。

さっきまであんなに寂しかったのに、

そんな気持ちは一瞬にしてなくなる。


「龍……」


その名前を呟くと、龍への想いが込み上げる。


たとえ叶わぬ恋でも、龍の事を想わずにはいられないんだ。
< 362 / 650 >

この作品をシェア

pagetop