短編集‥*.°



***


「あら、どうしたの?」


保健の早川先生に事情を説明すると、
苦笑いしながら、
速水くんソックリの人を
治療してくれた。

正直、ここに居る意味はないけど…

…なんか、罪悪感がある。

…そういえば、かなり不謹慎だし
失礼だし反省すべきなんだろうけど…

…まるで、この展開。

『桜風』みたい…

最初、琴音ちゃんが速水くんに
肘鉄をくらわせて、
保健室に連れていく。

…まさかね。

ここは現実だし、私は本当にこの人に…
き、危害を加えたんだし?

ワザとじゃないけど。

違うけど…


「早川先生!職員会議が…」


ガラッと保健室の扉が開いて、
見た事のある先生が駆け込んで来る。

…どなた?


「あ、そうなんですか…
 ちょっと席外すね。山春さんも、
 気が済んだら教室に行きなさいよ」


…え、早川先生…

まさか、出て行く気?

案の定、早川先生は出て行った。

…え、てことは、わ、私…

…この人と、二人きり──!?

その人は、
ベッドに寝転んで右手で顔を覆ってる。

話を聞いたのか、
忙しなくソワソワ動いてる。


「…」

「…」


きっ、気まずい…

なんか喋らないと、
逆に失礼…だよ…ね…


「…あっ、あの!」

「…なに」


うっ…

謝ろうとしたけど、
声がかなり不機嫌そうで…

ますます謝り辛い…

頑張れ、頑張るんだ私!


「あの、すいませんっ!」

「…は?気持ちこもってない」


…は?


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