恋をした私は溺れてゆく
静かに流れる


彼が寝息をたてている。


疲れていたのは分かっているけど
寝てしまえばやっぱり寂しい。


彼が眠ってしまった空間は
一人でいるようなもの。


二人の時は停止して
一人ぼっちの時間が
静かに流れる。




彼の腕枕から外れて起き上がり
窓から見える四角い空を眺める。



月明かりなんて洒落たものじゃなく
どこにでもある街灯の白い光が反射した
向かいのマンションの外壁のグレーが
四角い夜空の黒を不鮮明にしている。




振り向けば決して美しいとは言えない寝顔と
対照的に規則正しく美しいリズムをとる寝息。


彼のアンバランスさの象徴のようで……




彼が眠ってしまった空間は
一人ぼっちでいるようなもの。




取り留めもなく
思考する時が
静かに流れる。



静かに流れる時の中
想うのは彼のこと。



隣で寝息をたてている彼のこと。






ねえ……
もっとたくさん話したり甘えたりしたいよ……



そんな言葉を飲み込んで
静かに一人ぼっちの時は流れる





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