願い事叶えます

生きるということ

魔女にストーキングされる日々に随分慣れてしまったケンは、
もう出掛ける度に背後に魔女がいることが当たり前となってきていた








「ところで今回はどちらにお散歩ですか？」



魔女が今日は箒に乗らずケンの後ろを歩きながらついてきて、のんびりと尋ねた




「別に目的とかねェよ…。ただ」



「ただ？」



「あの部屋にいるとお前もずっといるだろ。
それって何か…何かおかしい気がする。

それで時々外に出て頭の中を整理するっておれの中で決めた」



「へえ」




魔女は規則正しい足音をたてながら歩いていたがそれが不意に止まった




「ん？」



ケンは怪訝に思い振り替えった




魔女は宙を見ていたが、気のせいか少し怯えた表情をしていた









あいつが怯えている…？





いつでも冷静で怖いもの知らずのあの魔女が…？






「…」



「おいどうした？」




ケンが声をかけると魔女は怯えた瞳でケンの方を見た












「…ケンさん」




紺色の瞳で見つめながら魔女はケンの名を呼んだ












ケンが覚えている限り確かこの魔女がケンの名を呼ぶのは二回目だ




一回目は初めて会った日…







（私に叶えてほしい願い事があるのでしょう？本井ケンさん？）




そう言っていた




最初はなんて胡散臭い女で面倒臭い奴なんだろうと思っていたが、

今は何故かそこまで思っていない














そういえば自分は…






彼女の名を呼んだことはあっただろうか？















魔女とケンはしばらく見つめ合ってた







「ケンさん。私と一緒に来てくれませんか…？」







とても弱々しい声で魔女はケンに言った






「どこに…？」







ケンが尋ねると魔女はケンの袖をひいた























「人が"星に触れました"」