彼とほんとの私
そう、私の両親はほんとの両親じゃない。この問題は彼には解決できない。


「それは、私の個人的な問題だから」


少し冷静に自分の置かれた立場を思い出しながら言った。


「俺は、きみの個人的なことが知りたい」


彼は、真面目にそう答えると、さらに近づいてきた。


「何も知らないくせに」


寝ている私は逃げることができない。せめて、態度だけは強がってみせる。


「ああ、何も知らない。だから、これから知っていくのさ。第一、悲しそうな顔をしたきみを放ってはおけない」


私、そんなに悲しそうな顔をしていたかしら。怒っているはずなのに…。混乱して、うまく頭が回らない。そうよ、この男がいけないのよ。


「何度も言うようだけど、これは私の個人的な問題だから、あなたにどうこうできる問題じゃないのよ」


「ねえ、キスしていい?」


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