彼とほんとの私
久しぶりに仕事をすると時間はあっという間に過ぎていった。入院中に時間が遅く感じていた時とは大違いだ。


やっぱり、仕事があるってありがたいことだな。そう思いながら、会社を後にする。


大通りでタクシーを拾うと、名刺に書いてあった住所を告げる。


タクシーは20分ほどで目的地についた。


大柴法律事務所のビルの前まで行くと、入り口の所で、智史が待っているのに気付いた。向こうも、私を見つけると足早に近づいてきた。


心臓が早鐘のように打つ。どうしてこんなに心臓がドキドキするんだろう。まるで、体全体が心臓になったみたいだ。


智史と会うときは、いつもベッドの上から見ていたので、こうして立っている時の目線で見ると、私よりも20cmは背が高い。


智史は、濃紺のスーツに白いワイシャツ、紫色のネクタイを締めていた。それが智史を大人の雰囲気にさせていた。


「待っていたよ」


智史は柔らかく笑いそう告げると、私を智史のオフィスまで案内してくれた。


やっぱり、笑うとどこか幼くみえる。


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