彼とほんとの私
近づく距離
次の日、私は会社にいた。


上司の、田中典弘(タナカノリヒロ)に、


「事故のことでは、いろいろとご心配をおかけしました。また、仕事を頑張るのでよろしくお願いします」


と、報告していた。


先輩の、野村育美(ノムライクミ)と、後輩の、林沙智子(ハヤシサチコ)は、入院中にお見舞いに来てくれていた。


「愛実せんぱーい、寂しかったですぅ。先輩のいない間、大変だったんですから」


お見舞いの時、会ったときには、大変だなんて言ってなかったのに何かあったんだろうか?


「沙智子、あんたは、仕事が増えて大変だっただけでしょ。愛実はいつもあんたのフォローに回っていてくれたんだから、あれくらいがちょうどいいのよ」


そう言って育美は沙智子をいなす。


「愛実は傷が治ったばかりなんだから、無理しないでね。休んでいた時の仕事は、きっと分からないだろうから、沙智子と私でやっておくから」


「育美先輩って、Sなんですね…」


沙智子は、ぶつぶつ言いながらも仕事に取りかかる。


私も仕事がんばらなくっちゃ。今日は金曜日。仕事が終わったら、智史と会う約束をしている。


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