彼とほんとの私
同居生活
智史は、使っていない部屋を、私に貸してくれる提案をしてくれた。両親と顔を合わせづらいならここに来ればいいよということだった。


私は、智史にアイロンを借り、スーツのしわを伸ばしながら考えてた。


さっき、智史に抱きしめられた時、びっくりしたけど、もっと抱きしめていて欲しかった。キスも嫌じゃなかった。今、心が弱っているから、そう思うのだろう。そうだ、これは恋心ではない。


そして、アイロンを返す時、


「部屋が見つかるまで、ここの部屋を貸してもらいたい」


と答えた。


智史の提案が無くても、いずれは家を出て一人暮らしを始めようと決めていた。それが少し早まっただけのことだ。今は、両親と距離を置きたい。





今日は土曜日。私は重い足取りで、家のドアを開けた。ダイニングに入ると、父と母が朝食をとっているところだった。


「愛実、お帰りなさい。愛実の分も朝食あるわよ」

母が言う。


「ただいま。朝食はコンビニで済ませたから。それより、ちょっと話があるの。いいかな」


そのまま、父と母の前に座る。


「私、一人暮らしを始めたいの。」

< 37 / 64 >

この作品をシェア

pagetop