彼とほんとの私
「おねいちゃん、だいじょうぶ?」


ちいさな声が聞こえてきた。その声は、少し震えているようだ。


「拓海(タクミ)を助けて頂いてありがとうございます」


さっき私の顔をのぞき込んでいた、知らない女のひとだった。拓海君のお母さんだろう。さっきから、心配そうな顔でこちらを見つめている。


あの子助かったんだ。拓海君っていうんだ。


「拓海君、怪我はないですか?」


「はい。すり傷ひとつなく……、愛実さんは?」

『大丈夫です』と言おうとしたら、


「彼女なら大丈夫ですよ」


若い男の声がした。

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