彼とほんとの私
信じられない真実
「彼女は意識もはっきりしているし、記憶も確かなようだ。検査の記録を見て、どこにも異常はない」


男は、そう言って看護師に書類を渡した。男の横顔は彫りが深く、きれいなアーモンド型の二重を長いまつげが囲っている。唇も薄くてやわらかそうだ。


「詳しい事は、看護師から説明してもらいます。じゃあ、後はよろしく」

声も深くて、男の色気がだだよっている。


若い女の看護師は、男の顔を見つめている。いや、見惚れていると言った方が正しいだろう。


「はい、倉田先生」



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