彼とほんとの私
「そう。それじゃあ、今日はなんで智史に会いに来ていたの?」


「そ、それは、私が智史にあることを依頼したからで、私は彼の依頼人なんです」


大柴の質問に、しどろもどろになりながらも、なんとか答える。


ちょうどその時、ラーメンが運ばれてきた。


「同居人で依頼人ねぇ~腑に落ちないけれど、これで、智史と争わなくていいのかな」


「えっ、どういうことですか」


私は食べかけていたラーメンを箸の間からスルスルと落としながら答えた。


「その敬語やめない?大柴さんって言うのもやめて、下の名前で呼んでよ。『英樹』って」


大柴は、私の目をじっと見つめて話す。


「大柴さん。冗談キツいですよ」


「冗談じゃないって言ったらどうする?」


間髪入れずに否定される。


「困りますよ」


「何で?中井さんも斉藤さんは今フリーだって言ってたけれど、俺じゃ役不足?」


結衣がそんなことを?この間、一緒に帰った時にしゃべったんだ。


「それとも、智史の方がいいとか」


「そんなわけじゃ…」


「智史は、やめといた方がいいよ。智史には彼女がいるから」


大柴は、私を試すように言った。


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