カメカミ幸福論
「ちょ、ちょっと待って・・・」
わたわたと立ち上がろうとする私の横を通り過ぎて、会計に向かう美紀ちゃんのあとを小暮が追いかけていく。ここをヤツにリークしたのは美紀ちゃんであることは間違いない。私は深呼吸を一つしてから、ゆっくりと立ち上がった。
レジ前で仲良く並ぶ彼らの背中を見ながら、鞄から財布を出す。
ダンが近寄ってきて、私の耳元でぼそっと呟いた。
「さてさて・・・あの男が目当てなのはムツミかな?それともあの女かな?」
若干ハイペースで飲んでいた。そのためにふらつく体で何とか立って歩きながら、私はふんと下品に鼻を鳴らす。
「・・・そんなの美紀ちゃんに決まってるでしょ。すぐ追いかけていったじゃない」
そうかな~というダンの声は無視してやった。ああ、もう。酔っ払った目にヤツのキラキラが鬱陶しいのよ!
店の出口で二人に追いつく。私はぶすっとしたままで、二人を交互に見て口を開いた。
「いくらだった?今日は私が持とうって思ってたから全額請求してちょうだい」
久しぶりの後輩との飲みだったのだ。私がご馳走するつもりで注文していたし、小暮の乱入がなければもっとスマートに会計をするはずだった。格好悪いわよ、私!ブツブツと心の中で飲みすぎた自分に呪いをかけながらそう聞くと、美紀ちゃんがにっこりと笑った。
「あ、小暮課長がご馳走して下さるって!やり取り早くて私も口挟めなかったので、後はお二人で話し合って下さい~。小暮課長、ありがとうございます!ご馳走様です~」
「は?」