カメカミ幸福論


 そしてランチタイムには、なぜか社員食堂での食事が増えていた。それは美紀ちゃんの差し金で、普段は外回りの営業で忙しいはずの小暮が新しい企画を練るのにここ最近社内にいるらしく、美紀ちゃんは目の端で小暮をひっ捕まえては私の前や隣に座らせようと頑張っている。

 以前の飲み会からの帰りに私が小暮から告白されたとは知らない彼女は、もっと二人を近づけたら亀山さんはもっと仕事にも精を出してくれ、きっといい方向にいくに違いない!と思い込んでいるようだった。

 私はうおー!!と心の中で叫んで懸命にそれを避けようとして、新しい面倒にぶち当たっているのにも気がついたのだ。

 食堂の端っこ、一団となって食事をする派遣社員の皆さんからの冷たい視線に。

 かつて私にトゲトゲしく厳しい言葉や嫌味をぶつけてきたあの人やこの人が、ドライアイス並みの冷気を背負って私を見ている。

 ・・・ってか、睨まれてる?おや、どうして?

 廊下で首を傾げる私にダンがカラカラと笑いながら、綺麗に化粧した派遣社員のレディースを見て言ったのだった。

 あの人間達は、あの男を狙っているのだろうって。男がムツミと一緒にいるので機嫌が悪いのだろうよって。

 あの男――――――――――って、小暮かもしかして!?

 恋愛事情からなが~いこと遠ざかっていた私は、感度もかなり鈍くなっているようだった。そういえばやつは出世頭で見た目も爽やかで、身長もそれなりに高くて愛嬌もある。しかも!独身なのだった・・・。


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