カメカミ幸福論
誰にも気付かれず、その存在はまるごと壁のようだった古参の事務員である私。
その二人がもしかしていい感じなの!?そう思われているらしく、何と私は彼女達に敵認定までされたようだった。
クラクラと眩暈がして、私は一人トイレの個室の中。
・・・ああ、どうしてこんなことに。
いてもいなくても一緒、と自他共に認める無能の会社員。
恋人もなく、独身の一人暮らしでなんとなくタラタラ生きていた私。
それが今では、良くも悪くも会社で存在感ある人間になってしまったというの!?・・・ありゃあ~・・・。
私はがっくりと肩を落としてため息をついた。
ちょっとばかり、生き生きとしていたのかもしれない。何も考えずに目の前の仕事を片付けていくことに爽快感を覚えていたかもしれない。
以前はよく考えたそんなことすらも、ここ最近は忙しくて頭の片隅にも浮かばなかった。
その事実に愕然とした。
それから、自宅でも。
一人でご飯を食べ、一人でシャワーを使い、一人で好きな時間に好きな体勢で好きな格好で寝る。そんな生活をずっとしていたのに、それが今では・・・。
常に隣に、人がいるのだ。
・・・いや、訂正。神がいるのだ、正しくは。
ダンはあの日の宣言通り、本当に私の同居人になってしまったのだ。今では一緒に部屋に帰ると姿を消さずに私のクッションに優雅にもたれかかってテレビをつけたりする。