カメカミ幸福論
私が作る夕食に一々口も手も突っ込み、何と一緒に食べたりする。
「人間のもの、食べるの?」
私が一度そう聞いた時には、ダンはあっさりと頷いた。
「食べられる。別になくても困りはしないが、あってもいいんだ。結構美味しいものだな」
その時のメニューは牛肉と玉葱のオムレツとほうれん草の味噌汁、サラダと冷奴だった。ムツミが食べるなら俺にも作れ、さもないと――――――と私を脅したので、ぶーぶー言いながら二人分作ったのだった。
同棲などしたことはなかったから、誰かの為に晩ご飯を作るのが初めてだった。それも、家族でも友人でもない異性相手に。
フライパンを揺らしながら、何だか変な気分になったものだ。
私、二人分のご飯作ってるよ・・・そう何度も確認して。
ダンと二人で小さな食卓を囲んだ。
目の前で外国産のような極上の美男子が冷奴を食べているのは、結構シュールな光景だった。
「別にいらないなら食べないでよ!食費上がってるっちゅーの」
「俺はムツミと一緒に住むと言っただろ~?人間のように扱ってくれ」
「なら食費や光熱費稼いで払いなさいよ!」
「天上世界へ一緒に行けば、そんなもの必要なくなるぞ。これが嫌なら一緒に来るか?」
に~っこり。
整った顔立ちに百万ボルトの威力をもつ微笑み。私はクラクラしながらも、それをなるべき見ないようにして中指を突き立ててやった。どうせヤツには通じまい。