カメカミ幸福論
そんなこんなで数日を過ごしたら、お盆休みに突入した。
会社は工場のみ稼働で、一事務員である私を含め、あとは皆5日間の休みとなる。
休みはどうすんの?という小暮のメールには実家に帰省すると嘘八百書いて返信し、私はクーラーをつけた部屋で、ゴロゴロと幸せに転がっていた。
側には冷えたビールグラスとサラミ。ううーん、幸せだわ!
私に驚きの告白をして以来この10日間ほど、小暮は以前にましてしっかりとアピールをしてくるようになっていた。私は男性にアピールをされるという行為自体が大変久しぶりで、ドキドキするよりも先に困惑がくるのだ。嫌では、ない。若干の喜びは確かにあると認めよう。だけど・・・何というか・・・「どないせえっちゅーねん!」と壁をグーパンチしたくなるざわざわが全身にあるのだ。
そんなわけで、お盆休みにデートしない?という小暮のお誘いからは、あっさりと逃げた。実家奉公を名目に。そりゃあ一日くらいは実家へも行かなきゃならないのだけれど、連日行くと嘘をついたのだ。勿論小姑神ダンはブーブーのたもうたけれど、それならそれで俺の居る期間が長くなるだけだぞ~との言葉を最後に、小暮に関しての話題は姿を消した。
そのダンは今、先日私が暇潰しに買ったファッション雑誌を寝転びながら読んでいる。神は人間が作った文字など何でも読めるらしい。
大きな体で畳の上に寝そべって、機嫌よさげに足をぶらぶらさせている。私はそれをぼんやりと眺めながら、ああ、慣れちゃったわ、と呟いた。
慣れた、こいつがいるの。