カメカミ幸福論
・・・・ああ、気持ちいい。
たくさん笑ったあとで、折角美紀ちゃんが綺麗にしてくれた私の顔は崩れているに違いない。ファンデーションはよれて、目元のアイラインは滲んでいるはずだ。
だけど、気持ちよかった。
心地よかった。
気分がスッキリしていて、実に満たされていた。
今まで、誰かといたいと思ったことなどなかった。だけどダンが出てきて私につきまとい、それから今晩の小暮も、それからそれからお昼の美紀ちゃんも、すごく有難いことかもしれない、そう思った。
話す相手がいるということ。
笑顔を分かち合えて、視線を交わせるということ。
そういう細かい、私が今まで忘れていた何か。
それが確実に今晩はあったのだって。
「お待たせ」
小暮がやって来た。駅前の喧騒が二人を包み込んでいた。私は返事も出来ないで、ただぼーっと彼を見る。
誰かが私と一緒にいる・・・それって、不思議だわ。そう思いながら。
アルコールの影響で視界がユラユラと揺れる。一日の仕事終わりの疲れと、思いっきり笑ったことで出た疲れ、それから眠気が私の頭を止めてしまっていた。
小暮が、やたらと格好よく見える。
これってアルコールマジック・・・?
「どうした、カメ」
小暮の笑顔がネオンに滲む。
「・・・」
言葉が出なかった。