カメカミ幸福論
「―――――――――あ?」
いつもの白い布を巻きつけたような格好で、しゃがみ込んで私を覗き込んでいる。・・・やたらと眩しかったのは、あんたが原因なわけね、なるほど。
「・・・あの男って、小暮のこと?いいのよ、私は一休みするんだから」
ため息をついて起き上がった。神が戻ってきた。きっと私が聞いたことの返事を持ってきたのだろう。でもまさか真昼間に会社行事の最中現れるとは予想してなかった。
きっとまた、夜の公園だろうって思っていたのだ。だっていつもこの神は「降臨」の舞台設定をしているようだったから。
お昼じゃキラキラも霞んじゃうわね、そう思って、私は改めてダンを見上げる。
彼はいつもの通り、一本の乱れもないプラチナブロンドの髪を煌かせ、不思議な色の瞳で私を見ていた。
「ハロー、ダン」
私は片手を上げて、ヒラヒラと振ってやる。
にっこりとダンが笑った。
「俺が現れて罵声を浴びせられなかったのは、初めてだなー」
「別に驚かなかったら怒らないわよ私だって。―――――――それで?」
手の平についた土をパッパと払って、私は神を見上げる。
「どうだった?ダメだって、やっぱり?」
ダンは暫く私を見ていたけれど、やがてゆっくりと首を振った。
「・・・認められた。今回は、俺の違反もあるからってことで。それに他言はしないって条件もあるけど、とにかくこちらはいつでも記憶を消すことは出来る。だから問題ないだろうとなった」
「それは」
私はにっこりと微笑んだ。
「良かったわ」