カメカミ幸福論
「どうして記憶を直さないんだ?そうすれば泣けるほどの幸せな記憶を貰えるんだぞ~?」
「・・・あんた、その喋り方何とかならないの?」
私は不遜にも人差し指で神を指しておいて(すぐに風で払われたけど)、顔を顰めた。それから親切にも説明してやることにする。
「ずっと言ってたでしょ?私のものは私のものよ。一分一秒だって、私だけのものであるはずなの。それをどんな素敵なものであったとしても変えられるのは嫌だわ」
ダンが、ふ、と笑った。
「ムツミは頑固だ」
「知ってたでしょうが」
「まあ、そうだな~」
ムツミは確かに、頑固で、意固地で、淡白な上に歪んでいて、大変な人間だったって。・・・うるさいわね。
風が通って、ダンの細いブロンドの髪の毛を揺らしていく。
この「神」が私の元へやってきてから、本当に毎日が大変だった。個人的な修羅場がいくつも現れて、自我が崩壊するかと思ったんだった。
まだほんの数ヶ月前のことなのに、私はやたらと懐かしく思い出す。
だけど。
だけど、この神がいなかったら―――――――――――・・・
「ねえ、ダン」
背中のほうから聞こえる歓声に負けないように大きめの声で、私は言った。
「あんたに会って、私、目元の皺が増えちゃったわ。あんたが来てから毎日毎日、よく怒って叫んだり怒鳴ったり、泣いたり――――――――――――それから・・・よく笑ったり。ほんと、大変だった」